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書名:

上級日本語教材:現代日本社会10

著者: 若林 茂
 
 
は じ め に
 
  このテキスト『上級日本語教材:現代日本社会10』は、ワシントン大学で日本関連の科目を担当している教授や研究者を対象としたものです。日本人の多くは、イメージとして漫然と「外国人には、日本の文化や社会は分からないだろう」と思いがちですが、決してそんなことはありません。
  私が接してきたアメリカ人の教授や研究者は、日本からやってくる若い日本人留学生など足元にも及ばないほど日本の文化や社会に関する知識を持っています。ですから日本文化に対する関心も深いのですが、これまでの傾向は歌舞伎や能や狂言に象徴される日本の伝統的文化が中心でした。
  ところが若い研究者は、日本の伝統的文化よりも現代的文明により関心があります。それはソニー、トヨタ、ホンダに代表されるような高品質なブランド・イメージが、大いに貢献しているようです。
  このような洗練された製品、しかも時代の最先端をいく現代文明の商品を作り出す現代日本社会にこそ関心があるのです。
  今回もこのような視点から、次の6つの章からテキストを構成しました。政治・経済・社会・文化など社会・人文科学の分野から、編者がこれこそ現代日本社会を解明するのに優れていると思える作品から選びました。
 

1 章 日本の政治:日高 義樹 「ワシントン・レポート」
2 章 日本の経済:竹中 平蔵 「ポリシー・ウオッチ」
3 章 日本の社会:鍵山秀三郎 『人間を磨く言葉』
4 章 日本の首相:麻生 太郎  「麻生内閣メール」
5 章 日本の文化:日野原重明 「生き方上手日記」
6 章 日本の書物:若林 茂  『 私の読書案内7』

 
  今回は日本の社会として、自動車関連製品の販売会社「イエローハット」の創業者である鍵山秀三郎氏の著作から選んでみました。鍵山氏は日本の社会では一般的に<掃除の神様>として多くの経営者から崇拝されています。毎日、早朝 6 時に出社し、自らの会社のみならず近隣地域をも徹底的に掃除をするという生活習慣を 40 年あまり続けてきた人なのです。その鍵山氏と個人的な交誼を得まして、人間的な魅力に惹かれました。まず日本の経営者ではめずらしく、相当の読書家ですから、お会いすると話題が尽きません。しかも鍵山さんの哲学とか生活信条というべきものが、「大きな努力で、小さな成果を」というものですから、かねてから私自身が疑念を抱いていた現代経済学の大前提である「最小の努力で、最大の成果を」という経済哲学の正反対なのでした。それが共鳴の起点となり、鍵山イズムを研究対象として考察するようになったのです。その鍵山イズムを理解するには多くの書物が刊行されている中で、鍵山氏の直弟子的人物で経営コンサルタントの亀井民治氏が編集した『 人間を磨く言葉 』が最適と思われましたので、著者の承諾を得て、このテキストに収録させて頂きました。
2009年7月31日 ワシントン州レドモンドの自宅にて     若林 茂
 
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