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書名: 上級日本語教材:現代日本社会9
編著者: 若林 茂
 
 
は じ め に
 
   このテキスト『上級日本語教材:現代日本社会9』は、ワシントン大学で日本関連の科目を担当している教授や研究者を対象としたものです。日本人の多くは、イメージとして漫然と「外国人には、日本の文化や社会は分からないだろう」と思いがちですが、決してそんなことはありません。
  私が接してきたアメリカ人の教授や研究者は、日本からやってくる若い日本人留学生など足元にも及ばないほど日本の文化や社会に関する知識を持っています。ですから日本文化に対する関心も深いのですが、これまでの傾向は歌舞伎や能や狂言に象徴される日本の伝統的文化が中心でした。
  ところが若い研究者は、日本の伝統的文化よりも現代的文明により関心があります。それはソニー、トヨタ、ホンダに代表されるような高品質なブランド・イメージが、大いに貢献しているようです。
このような洗練された製品、しかも時代の最先端をいく現代文明の商品を作り出す現代日本社会にこそ関心があるのです。
  今回もこのような視点から、次の6つの章からテキストを構成しました。政治・経済・社会・文化など社会・人文科学の分野から、編者がこれこそ現代日本社会を解明するのに優れていると思える作品から選びました。
1章、 日本の政治:古森 義久 「ワシントン報告」
2章、 日本の経済:稲本 正  「森と都市を結ぼう」
3章、

日本の社会:堀田 力  「団塊の世代は」

4章、 日本の首相:福田 康夫 「福田内閣メール」
5章、 日本の文化:山田 洋次 「映画の達人(後編)」
6章、 日本の書物:若林 茂  『私の読書案内6』
   今回は日本の文化として、前回に続き映画というジャンルからも選んでみました。特に山田洋次監督を選んだのは、渥美清主演による『男はつらいよ』シリーズが、日本の多くの大衆の心を掴み国民的映画として長い間人気を博してきたからです。実際、この寅さんシリーズは、27年間に48作品が制作され、ギネスブックにも掲載されました。
  その山田洋次監督が藤沢周平の時代小説を原作とした時代劇三部作を完成させ、それが高い評価と人気を獲得してきているということがあります。例えば『たそがれ清兵衛』は、アカデミー賞の外国映画部門にもノミネートされました。
  また、同時期にトム・クルーズが製作・主演した『ラースト・サムライ』が全米規模で大きな話題を提供しました。その映画製作の伏線は新渡戸稲造著『武士道』<BUSHIDO>であり、映画の中での理想的なサムライとしてのモデルになったのは西郷隆盛でした。
  その西郷隆盛は、現在でも多くの日本人に尊敬されている英雄です。こういう多層な現代的事実こそが、テキスト選択の大きなファクターになりました。
2007年12月3日     若林 茂
 
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