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書名: 上級日本語教材:現代日本社会8
編著者: 若林 茂
 
 
は じ め に
 
   このテキスト『上級日本語教材:現代日本社会8』は、ワシントン大学で日本関連の科目を担当している教授や研究者を対象としたものです。日本人の多くは、イメージとして漫然と「外国人には、日本の文化は分からないだろう」と思いがちですが、決してそんなことはありません。
  私が接してきたアメリカ人の教授や研究者は、日本からやってくる若い日本人留学生など足元にも及ばないほど日本に関する知識を持っています。ですから日本文化に対する関心も深いのですが、これまでの傾向は歌舞伎や能や狂言に象徴される日本の伝統文化が中心でした。
  ところが若い研究者は、伝統文化よりも現代文化により関心があります。それはソニーやトヨタに代表されるような高品質なブランド・イメージが、大いに貢献しているようです。このような洗練された製品、しかも時代の最先端をいく現代文明の商品を作り出す現代日本社会にこそ関心があるのです。
  今回もこのような視点から、次の6つの章からテキストを構成しました。政治・経済・社会・文化など社会・人文科学の分野から、編者がこれこそ現代日本社会を解明するのに優れていると思える作品から選びました。
1章、 日本の政治は、日本経済新聞社のジャーナリスト清水 真人氏の最近の論考から「小泉改革の政治経済学」を選びました。
2章、 日本の経済は、ファンドマネジャーとして現実の生きた金融経済を分析する山崎元(はじめ)氏のユニークな論文的随筆を選びました。
3章、

日本の社会は、イギリスに造詣が深い著述家林望氏の日英比較教育社会論という視点からの分析である「家族物語」を選びました。

4章、 日本の首相は、小泉首相の後を継承した戦後生まれの安倍晋三総理の「安倍内閣メール」から、その政治信条と政策アッピールを選んでみました。
5章、 日本の文化は、近年アメリカでも関心が高まっている日本映画の監督から、山田洋次氏を選らび、その映画人生を振り返りました。
6章、 日本の書物は、編者がこれまでに連載した「朝日新聞」や「北米報知」の書評をまとめた『私の読書案内5<太平洋の架橋>』から、抜粋しました。
   今回は日本の文化として、初めて映画というジャンルからも選んでみました。特に山田洋次監督を選んだのは、渥美清主演による『男はつらいよ』シリーズが、日本の多くの大衆の心を掴み国民的映画として長い間人気を博してきたからです。実際、この寅さんシリーズは、27年間に48作品が制作され、ギネスブックにも掲載されました。
  もう一つは、その山田洋次監督が藤沢周平の時代小説を原作とした時代劇三部作を完成させ、それが高い評価と人気を獲得してきているということがあります。例えば『たそがれ清兵衛』は、アカデミー賞の外国映画部門にもノミネートされました。こういう事実こそが、テキスト選択の大きなファクターになりました。
2006年12月3日     若林 茂
 
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