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書名: 上級日本語教材:現代日本社会6
編著者: 若林 茂
 
 
は じ め に
 
  このテキスト『上級日本語教材:現代日本社会6』は、ワシントン大学で日本関連の科目を担当している教授や研究者を対象としたものです。日本人の多くは漫然と「外国人には、日本の文化は分からないだろう」と思いがちですが、決してそんなことはありません。
  私が接してきたアメリカ人の教授や研究者は、日本からやってくる若い日本人留学生など足元にも及ばないくらい日本に関する知識を持っています。ですから日本文化に対する関心も深いのですが、これまでの傾向は歌舞伎や能や狂言に象徴される伝統文化が中心でした。ところが若い研究者は、伝統文化よりも現代文化により関心があります。
  それはソニーやトヨタに代表されるような高品質なブランドイメージが、大いに貢献しているようです。このような洗練された製品、しかも時代の最先端をいく現代文明の商品を作り出す現代日本社会にこそ関心があるのです。
  今回もこのような視点から、次の6つの章からテキストを構成しました。政治・経済・社会・文化など社会・人文科学の分野から、編者がこれこそ卓越したものと思える作品を選びました。
1章、 日本の政治は、毎日新聞記者の松田喬和氏が小泉内閣の性格を長年の取材体験から論じたもので、エピソードを交え興味深く読ませてくれます。
2章、 日本の経済は、日本経済新聞の森 一夫氏が最新の経済問題を取材・解説しています。
3章、 日本の社会は、大学を卒業することなく東大教授になった世界的に有名な建築家安藤忠雄氏の迫力に満ちた職業観です。
4章、 日本の首相は、日本の歴代内閣でもっとも高い支持率を獲得し、今もってその人気が衰えない小泉純一郎総理からのメッセージです。
5章、 日本の文化は、群馬県大間々で洋品店を経営する松崎靖氏が毎月発行している「虹の架橋」に連載している心温まる記事から選びました。
6章、 日本の書物は、編者が連載した「朝日新聞」や「北米報知」の書評から、この本は是非読んで欲しいというものを選びました。
  この6つの章の中でも今回は、特に松崎靖氏の章に精魂を傾けました。それはこの人は、いわゆる商人であり学者やジャーナリストではありませんが、文章の背後にある生き方が輝いているから、と思ったからです。
  地元の駅のトイレをボランティアで清掃をしたり「虹の架橋」の<今月のトイレ美術館>を通して、芸術文化の香りを地元の人々に届けています。この人が実践している生き方こそ、江戸時代からの伝統である豊かな商人文化だと思えます。しかも、最新号で取り上げた新潟県十日町市の松村ひろみさんの話は、同時代の日本の生活文化における日本人の精神構造と行動規範が、如実に反映されています。日本が世界に誇る技術力や経済力も、実はこのような実直な人々のきめ細やかな日々の営みによって支えられているのです。
2004年12月30日     若林 茂
 
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