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書名: おばちゃんの知恵 <私の読書案内4>
著者: 若林 茂
 
 
86歳を迎えた是清操姉の長寿を祝す
 
は じ め に
 
  是清操(みさお)さんを、我々は親愛の情を込めておばちゃんと呼んでいますが、今年の1月5日で86歳を迎えました。
  おばちゃんは、肌の艶もよく目も耳も鼻も良好で、特に歯は丈夫ですから、今でもスルメなども食べられます。
  私が驚くのは、老齢にもかかわらず、よく本を読むし記憶力も実に良いのです。
  例えば、日本では空前の大ベストセラー小説になった渡辺惇一の『失楽園』の原作もテレビ番組も、さらに映画のビデオもみんなおばちゃんから貸してもらったのが懐かしい想い出です。
  そして、小説のみならず政治や経済にも関心が深いのです。ですから、こちらでも日曜日に放送されているフジテレビの政治討論番組『報道2001』もよく視聴しています。
  時折、それらについて質問を受けますが、それらの疑問点が時には大学院生のレベルであったりして、実に驚かされます。
  それだけ頭脳明晰で、好奇心も旺盛ということですが、ただ一つ本人が残念がっていることがあります。
  数年前に自ら転んでから、腰をいためて杖を使うようになり、今ではワーカーとよばれる歩行器を利用して、歩かざるを得ないことだそうです。
  今年93歳を迎えた是清毅長老との二人だけで、一戸建てのハウスに住んでいます。お二人の生活が肉体的にも精神的にも健康であるという長寿夫妻の秘訣は、次の三点が大きな要因と私は分析しています。
  第一におばちゃんが、料理好きということが挙げられます。毎回三度の食事を多種多様の食材を駆使して調理しています。これが何よりもお二人の健康維持に、効果があるのだと思います。
 

是清操さん近影 2005年4月6日
 
  古来より<医食同源>といわれ、食事が健康の源ですから、常に栄養を考慮して、調理も工夫しているおばちゃんの貢献大なるものがあります。
   私もそれらのおすそ分けを時折、頂きます。特にちらし寿司や野菜の煮物は抜群の美味しさがあり、慶と共にいつも感謝して味わっております。
  第二に規則正しい生活スタイルで、毎日散歩を欠かさないという健康志向です。お二人とも深夜型で夜中の1時過ぎに休み、朝は10時近くに起きるというもので、朝食後の午後2時に散歩に出ます。
  月曜から土曜まで、天候が悪くなければ1時間以上も散歩しつつ新鮮な外気を吸収しています。私も現在は週3回、待ち合わせて一緒に散歩をしつつ、マリナーズから政治経済まで、色々な情報交換をしながら気分転換を図っています。
  第三におばちゃんは、手先が器用で元々書道でよく筆を握っていたのですが、近年はペンでメモをよく取ります。また裁縫も得意ですから、先日も私のズボンの裾挙げをやってくれました。
  欧米では胡桃を握り指先を鍛えて、頭脳を刺激しようという人が多いですが、針仕事は一石二鳥でもあります。
  これら三点(料理、散歩、手先仕事)が、おばちゃんの健康の秘訣です。私自身もその三点から恩恵を受けていますから、おばちゃんは、まさにアメリカにおける母親のようなものです。
 

散歩の途中にての是清夫妻
 
  そのおばちゃんに、しみじみと人間的親近感をいだいたエピソードがあります。昨年の春、是清長老が軽い脳梗塞の後で耳が遠くなり始めた頃でした。
   おばちゃんが泣きながら、私に相談したのは、お墓のことでした。是清さんの御両親の立派な墓石があり、その前に既に長老夫婦のお棺を収める区画も購入してありました。
  長老はそこに収まり、その墓石に新しく自分らの墓碑銘を刻んでもらうつもりでした。
  ところが、おばちゃんは嫁いで来てから60有余年、人には語れない苦労をしてきたそうです。死んだら舅姑とは別に二人だけで、お墓に入りたいという切なる願いでした。
  人は一生のうち一回は小説が書けるといわれますが、おばちゃんの場合は、これがキーポイントだと感知しました。それで私もおばちゃんのために一肌脱いで、長老に話をしたのです。
  紆余曲折がありましたが、結局お二人のお墓は墓地管理建物の中にある別の場所に確保されるようになりました。
  既に二つのブックケース型の骨壷を購入し、漢字の戒名も長老が提出しています。間もなくそれも完成しますが、このように既に永遠の眠りへの準備も完了しているのです。
  そういう辛抱強い人生を歩んできたおばちゃんに、日頃の感謝をこめて本書を捧げるものです。
2005年4月9日 若林 茂
 
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