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#2 
 
 
#2 アーカンソー州ホットスプリングス国立公園
若林 茂
写真: 州都リトルロックにある州議事堂
アーカンソー州公式サイト http://www.arkansas.com/
 
 
 
  アーカンソー州と言えば、日米関係に精通している人は、マッカーサー元帥、フルブライト上院議員、そしてクリントン大統領の三人を思い浮かべる事でしょう。
  マッカーサー元帥は、占領期の最高権力者として戦後日本の政治・行政に君臨しました。フルブライト上院議員は、フルブライト奨学金制度を成立させ、多くの留学生をアメリカに招く事により、日米関係に大きな足跡を残しました。
  この二人は、もはや歴史的存在ですが、クリントン大統領はアーカンソー州及び州都リトルロックを、世界に広めた最大の功労者であることには異存の余地はないと思われます。
  クリントン氏は、アーカンソー州知事時代に地元ホワイトリバー開発計画において、収賄スキャンダルに見舞われました。そして大統領時代には、モニカ・ランスキーとの醜悪なる不倫スキャンダルがジャーナリズムを賑わしました。
  しかしながら、彼は2期8年間にわたり大統領職を全うしました。それは戦後最長なる高景気という外的好条件に恵まれたという強運が、幸いしたものと判断するのが妥当でしょう。
  そのクリントン氏が上院議員と知事の時代を過ごしたのが州都リトルロックです。人口50万の落ち着いた佇まいを見せるこの都市は、アーカンザス川のほとりにあります。中心部にある州議事堂は、南部的荘厳さがあり一見の価値があります。(写真1参照)
  ホットスプリングス国立公園(Hot Springs National Park)は、リトルロックの南西に位置しています。そこから車で約1時間ですから、手ごろなドライブでもあります。
  通常、アメリカ合衆国の国立公園は、入園料として車一台について$10―20を支払わなければなりませんが、ここは例外的に無料です。
 
  まず街の中心部にあるビジターセンターを訪れて、資料を収集します。普通は建物の前に大きな無料の駐車場が、たっぷりと用意されているもんですが、ここは街中にある為か近くの有料パーキング・スペースを探さなければなりません。
  何処でもそうですがパーク・レンジャーと呼ばれる制服を着た係りの人が、親切に無料のガイドマップなどを配布してくれます。そしてこちらの質問には、丁寧に答えてくれます。
  最初に何処を見物するのがベストかと尋ねたら、街の全貌が眺められるホットスプリングス・マウンテンタワーを、勧めてくれました。

ホットスプリングス・マウンテンタワーの全景
ホットスプリングス国立公園:
http://www.nps.gov/hosp/index.htm
 
  小高い丘をジグザグにドライブして行くと、わずか15分ほどで頂上に着きます。エレベーターでマウンテンタワーと呼ばれる塔に昇ると、遥か彼方から真下の街の全景までが眺められます。
  今回は新緑が目に鮮やかに飛び来んできましたが、秋の紅葉の時期には、さぞや艶やかな自然の色彩美を堪能出来るに違いないと想像力を膨らましました。
  このホットスプリングス・マウンテンと命名された小高い丘のような山は、なかなか風情があります。ここには幾つかのネイチャー・トレイル(自然遊歩道)が、整備されていますからハイキングも楽しめます。
 

アーリントン・ローン公園(Arlington Lawn Park.)
http://www.hotsprings.org/visitor_info/
  丘を降りると道路の右側に、誰でも利用出来る温泉飲料スポットがあります。多くの人々がポリタンクやペットボトルに温泉水を入れています。
  4つの蛇口があり、ボタンを押すと溢れるばかりの温泉飲料が流れ出てきます。
  私も持参したボトルで試飲しましたが、無色無臭で美味しい温泉水でした。日本の温泉のイメージは、硫黄などの強い匂いがありますが、ここでは全くありません。
  この公共の温泉飲料スポットのそばには、緑の芝生が敷きつめられたアーリントン・ローン公園があります。
 
  そこには、こんこんと湯滝が流れています。直線的なプールのような池に温泉が、たっぷりと溢れるようにあり、あたかも湯船のようです。透明な温泉は、直接手で触れてみると丁度よい温かさです。
  公園内には東屋もあり、散歩の途中で一休みするのに良い具合に整備されています。ここから勾配が急なハイキング・コースもあります。
  この公園を後にして、歴史の重みを感じさせる街中を散策しました。古代ローマの彫刻美のような雰囲気を醸し出している噴水が随所に見られます。
  しかもそれらが、すべて温泉なのです。街のメインストリートには、豪華な温泉館が軒を並べています。それぞれの建物が歴史的建造物としての重厚さが漂っています。
  私は当地での温泉体験を、Buckstaff Bathhouse(バックスタッフ温泉館)で試みました。1912年から営業しているという由緒正しい温泉館で、場所はビジターセンターの3軒隣です。

ホットスプリングス市の街並
http://www.hotsprings.org
  温泉の入浴料金は、約$17で全行程がマニュアル化しており、ほぼ1時間半を要します。日本の温泉とは異なり、アメリカの伝統的温泉は、係員が全部世話をしてくれます。
  私の体験に基づいて、それを順番に箇条書きすると次のようになります。
 

バックスタッフ温泉館
www.buckstaffbaths.com
 
  1. 受け付けで入力料を支払うと、申し込み用紙に氏名、住所等を記入し、提出します。
  2. 財布、腕時計、鍵等の所持品を、セーフテー・ボックスに入れて預かってくれますから、その鍵を受け取ります。
  3. 入浴口が男女別に分けられてますから、私は男の方のドアーを開けると大きな白人がロッカーへ案内してくれます。
  4. ここで生まれたままの姿になると、大きな白いシーツを手渡してくれますから、これを腰に巻いて移動します。
  5. 深めのホーローで出来たバスタブが部屋のように仕切られて置かれてあり、そこに温泉を流し込んでいます。
  6. 各自が温めに調整された温泉に肩までゆったり漬りながら約20分リラックスします。
  7. 足元からジェットタブが心地よく、足の疲れを解してくれます。
 

バックスタッフ温泉館の入口と温泉浴槽
www.buckstaffbaths.com
 
  1. 時間になると黒人の係員が、声を掛けてもう出るように促してくれ、バスタオルを上手に腰に巻いてくれます。
  2. 今度は温泉サウナの部屋に案内され、3分入ることを指示して行きます。
  3. 玉のような汗が吹き出て、そろそろ限界と感じるときに再び黒人の係員が現れ、汗を拭き取りシーツをかぶせます。
  4. このままのスタイルで、沢山並べられたベッドに背中を下にして、横になります。
  5. しばらくして、黒人の係員が今度は大きな蒸しタオルを肩に当てていきます。
  6. これは私にはかなり熱く感じましたが、さらに背中と腰にも蒸しタオルを当てていきます。
  7. この蒸しタオルをそのままにして、大きなシーツですっぽり全身をラップの如く包み込みます。
  8. この状態で15分以上経過しましたが、熱さに我慢出来ず私はついに根をあげてしまい、係員を呼びました。
  9. 再び汗を流す為にシャワーを浴びるのですが、このシャワーが上からしたまで三方向から出るので気持良いです。
  10. 出てくると再び、係員がバスタオルで拭いてくれて、それを腰に巻いてくれます。
  11. さらに再び大きな白いシーツを頭からかぶせてくれ、ク―リング・ルームと呼ばれる休憩室に案内してくれます。
  12. 天井から大きな扇風機が下がり、心地よい風を送ってくれますので、再度ベッドに横になります。
  13. 各自気が済むまでベッドや椅子で寛ぐ事ができて、最後はロッカーに行き、着替えます。そして受け付けにより、預けた所自品を受け取り全行程が終了しました。
  今回、私は時間の都合でマッサージをしませんでしたが、ここでも各種のマッサージ・サービスが用意されています。
  例えば、スウエーデッシュ・マッサージと呼ばれる20分間の全身マッサージは、$18の料金設定になっています。
  私が体験したアメリカの伝統的温泉スタイルとこのスウエーデッシュ・マッサージを同時に行うのが、トラデショナル・バッシング・パッケージです。この料金は約$38です。
  そして注意を要するのは、ここでは日曜日が休みという事です。しかも12月から2月までの冬の期間は、土曜の午後も休みになっています。
 
  さらに通常の営業時間は、朝7時から11時45分までと午後1時半から3時までです。如何にもアメリカ的でゆったり構えたビジネス・アワーですので、事前に充分それをわきまえて訪れた方が無難です。
  アメリカの伝統的温泉を堪能した後は、この地のランドマークであるアーリントンホテルのラウンジ・バーで、咽の渇きをビールで癒すのが壮快です。
  このホテルはアーリントン・ローン公園の真横にあり、バックスタッフ温泉館から徒歩2分です。ラウンジ・バーは、天井が高く、アメリカ的伝統を感じさせます。
  それは往年の名画「カサブランカ」で、ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンが再会したリックズ・カフェを彷彿させます。

The Arlington Resort Hotel & Spa
http://www.arlingtonhotel.com/
 
  ところで、ホット スプリングス国立公園は、ビル・クリントン前大統領が少年時代を過ごした土地でもあります。大統領になったクリントンが、初等教育を受けた土地として高く評価され、その家が保存されています。
  1953年、クリントン一家はホット スプリングスに移り住み、ビル・クリントンはセント ジョンズ・カトリック・スクールに通うようになりました。
 

クリントン元大統領と少年時代を過ごした家
http://www.hotsprings.org/japanese/home_jp.html
 
  すでにその頃、カトリック・スクールの修道女たちは、まだ少年だったビル・クリントンに、「いつか大統領になる」と思わせる聡明さを感じていたようです。
  アーカンソー州ホットスプリングスは、アメリカの国立公園制度の中でも最小で最古の国立公園です。今回は古きアメリカの伝統的温泉を体験した小旅行でした。
 
(読売アメリカ旅行特集・2003年夏号)
05/25/03
 
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